祖父の形見の腕時計を失くしてしまった思い出

僕が小学生になるかならないかというくらいの頃、祖父が亡くなった。60歳ちょっと過ぎだったと思う。

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祖父の家は隣の県にあり、車で移動すると約半日かかったため、年に何回も会うことはなかった。

僕の祖父は、自営で精密機械を扱う職人のような仕事をしており、自宅の片隅にある仕事場の机の上には色々な道具や細かい機械がいっぱい。

子供の頃の僕はそれらを眺めるのが好きだった。

優しかった祖父は、僕を膝の上に乗せ、作業の様子を見せてくれたように記憶している。

葬儀の後、祖母から「おじいちゃんの形見だよ」と言われて受け取ったのが一つの腕時計。デジタル式のもの。

型はもっと古いだろうけど、形はこんな感じだった。

僕は、初めて持った腕時計でもあるこのおじいちゃんの形見を大事にし、いつも持ち歩いていた。

当時、僕は山の近くに住んでいて、よく山の中に秘密基地を作りに出かけていたように思う。

秘密基地に行くときにはいつも、母親から買ってもらった小さな丸い肩掛けカバン（ポシェットみたいな）を下げていたのだが、その中に時計を入れ、木々の下をくぐって走り回る。

ある日、家に帰ってきて、ポシェット部分をどこかで落としたのか、無くなっていることに気がついた。祖父の形見の時計も入ったまま。

僕は驚いて、自分が歩いたと思うところを泣きながらたどったが見つからず。

その後もしばらく、毎日山に行っては繰り返し探したけれども、結局発見できなかった。

僕は、大事な形見を失くしてしまったと言い出すのがとても怖くて、母親には言い出せなかった。

「時計はどうしたの？」と尋ねられたらどうしようとびくびくしていた。

今でも心が痛む。

最近はこういう腕時計（型はSCDC035というもの）を使っていたのだが、

家の中のどこかに置いて所在が分からなくなってしまった。

失くし物ばかりで本当に情けない。

見つかるまでと思い、この時計を通販で購入して腕につけている。

今週のお題「今だから言えること」

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